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一生忘れられない思い出ができたことを「成功」と呼ぶならば、これから語ることは間違いなく私の成功体験である。といっても、私自身が何かを成し遂げたのではない。私が小学生のときに、隣のクラスの発表を聞いただけなのだが……。
あの場に居合わせた私は、相当に幸運だった。もしかしたら、学生時代の運をあのときに全部使ってしまったのかもしれない。だから、あんなにモテなかったのか……。というのは置いておいて、その体験を以下で紹介しよう。
・小学校の卒業直前に
あれは小学校卒業を間近に控えた3月頃のこと。私が通っていた小学校では、卒業式の前日くらいに「生徒がメインの卒業イベント的なもの」を行うのが常であった。ざっくり言うと、クラスごとに歌を披露するイベントで、式本番が厳(おごそ)かな雰囲気だとしたら、こちらは “みんなで楽しく” という感じ。
なので、そのイベントで歌う曲のチョイスは生徒たちに任され、有名なJ-POPから選ばれるのが毎年の恒例だった。確か、私のクラスは荒井由実さんの『卒業写真』だったように思う。なにぶん20年以上前のことなので記憶が定かでないのだが、今でもはっきり覚えているのが隣のクラスの発表だ。
それは小6の私にとって衝撃以外の何物でもなく、その曲を初めて聞いた私は色々な意味で混乱してしまった。彼らが何を歌ったのかというと……
尾崎豊さんの『卒業』
──である。想像して欲しい。
「ギョーギよ〜く真面目なんて出来やしなかった〜♪」と、体育館のステージに行儀よく並んだ小学生が真面目に合唱している様子を。
「夜のコーシャ窓ガラ〜ス壊して回った〜♪」と、ランドセル背負って登下校している子どもたちが歌う状況を。
・違和感とカッコよさ
もちろん、その中には夜の校舎に忍び込んで窓ガラスを壊して回るような子なんて1人もいなかった。それどころか、数カ月まえの年末大掃除ではみんなで窓ガラスをピカピカに磨き上げていたのだ。
自分のクラスの窓だけじゃない。理科室とか、音楽室の窓もだ。面倒な床のワックスがけだって、ちゃんとやっていた。それなのに……!
夜のコーシャ窓ガラス壊して回るって……! マジかよおい! めっちゃウソやんけ! いや、そもそも窓ガラスを割ることに開き直っていいんか? そんなことしたら……
『終わりの会』で絶対問題になるやんけ! しかも、『終わりの会』が終わらへんヤツやんけ! 先生が「ちゃんと反省するまで、いつまでたっても帰れませんよ〜」って言うパターンやんけ!
──と、私は思ったのだが、「そういうことを口にしてはいけない空気感」みたいなものを小6ながらに感じていたので、何も言わなかった。むしろ、そのような違和感よりも「不良っぽくてカッコいい〜」という気持ちの方が勝っていたように思う。
おそらく、「卒業イベントで歌う曲は尾崎の『卒業』にしようぜ〜」と言い出した子も、私と同じような気持ちで選んだのだろう。「不良っぽくてカッコイイし、卒業だから」と。
・歌う側に問題
尾崎豊さんの『卒業』は名曲中の名曲である。曲自体は何も悪くない。ただ、それを小6がクラス全員で歌うと「不良に憧れて背伸びしてます感」が全開の歌になってしまう。今で言うところの「中二病」の集団が歌っている感じと言おうか。
ちなみに、「こ〜の支配からの 卒業〜♪」と歌っていたそのクラスの子たちも、 それを聞いていた私のクラスの子も、数日後には当たり前のように中学に進学した。「こ〜の支配」から全然卒業できなかったことは言うまでもない。
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
Source: ロケットニュース24
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