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皆さんは「奇跡」というものを信じるだろうか? いくつかの偶然が重なり、想定を超える結果をもたらす奇跡というものを。私・佐藤英典(本名:山科英典)は信じている。いや、ある数奇な出来事に遭遇して、信じるようになった。
これは、絶望的に運動神経の悪いオッサンの私が、ポールダンスのレッスンを通じて参加することになった競技「ポール・スポーツ」の大会に参加して巡り合った奇跡の物語である。
・「ポール・スポーツ」とは?
まず初めに、ポール・スポーツについて説明しておきたい。ポールダンスというと、多くの人が容易にイメージできるだろう。これまでにも私がレッスンを受ける様子を記事で紹介してきた。ポールを使って、パフォーマンスを行うショーの要素が強いものがポールダンスと呼ばれている。
ポール・スポーツは厳格なルールに基づき、より競技性を高めたものであり、体操やフィギュアスケートのように、審判による採点が行われる。世界十数カ国で大会が行われており、各国での大会を勝ち上がった者が世界大会に出場することができる。オリンピック競技化を目指しており、世界大会に出場するには国際基準に基づいたルールを正しく把握し、理解し、なおかつかなりの技量が求められる。
無謀なことに、ポール経験1年数カ月の私は、これに参加することにした。始めたばかりの頃は、木登りのヘタなサルレベルだった私が……。
・厳格なルール
最初にしなければいけなかったことはルールの把握だ。ルールブックは、なんと139ページもある。これを頭に叩き込むのは至難の業で、物忘れが激しくなりつつあるオッサンの頭には全然入ってこない。
・無謀な挑戦
運動神経の悪いオッサンが越えていかなければいけない課題は、ほかにもある。演技は2本のポールを使って行われる。1本は「スタティック」と呼ばれる通常のポール。もう1本は「スピニング」と呼ばれる回転ポールだ。回転ポールは力をかけるとクルクルと回るようになっている。私は1年以上レッスンに通いながら、大会参加表明時点で1度もスピニングに挑んだことがなかった。
さらに競技ポールの高さは4メートル。これをフルに使って演技をしなければいけない。最低でも2回(どちらか一方)、上まで登らなければいけない。私は高所恐怖症である……。
さらにさらに、演技時間は3分50秒以上4分以内という規定がある。2分以上の演技をやったことのない私には、未知の領域である。体力が持つかどうか……。
・練習する以外ない
そのほかにも、参加に不利な要素はいくらでもある。そんなものを数え上げても意味がない。できることはただひとつ、練習するしかない! がんばる以外に何もない!!
参加を決定したのが2018年1月末で練習期間はたったの2カ月しかなかった。4分の演技を考えたことすらなかったが、練習に練習を重ねて、何とかこれでいけるんじゃないか? と思うものを作り上げ、あとはひたすら自分の演技を繰り返すだけ。
・着実に成長
最初のうちは回転ポールに振り回され続けたものの……。
大会直前には何とかそれなりにコントロールできるようになり。
高さに対する怖さもほとんどなくなった。
・そして迎えた大会
そうして練習を重ねて、2カ月はまたたく間に過ぎ、4月7日の大会の日を迎えたのである。会場は高知県の県立県民体育館。高いポールで練習を繰り返してきたおかげで、4メートルのポールがそれほど高く見えない。1度きりのリハーサルでも、それほど怖さを感じることはなかった。
ちなみに衣装もメイクも自前。テーマは「祭り」だ。歌舞伎の弁慶を参考にして、メイクを自分なりにやってみたのだが……。
・本番
千葉の県民的スター、ジャガーさんに見えなくもない。ここまで来て、メイクがどうこう言っている場合ではなかった。そうしてついに本番を迎えたのである。
自分の持てる力を最大限に発揮して、繰り返してきた練習の成果を信じて、無心で演技を行った。
たとえ運動神経が悪くても、オッサンでも、やれば出来る。そのことを証明したかったのだ。ほかには何もなかった。本番の直前に、ここに至るまでの道のりが一瞬フラッシュバックして、涙が出そうになった。しかし泣いている場合ではない! とにかくやり切るんだ。
自分に与えられた4分間は、アッと言う間に終わった。
演技直前に振付を1カ所変更したため、演技中に頭が真っ白になった瞬間があったが、それでも概ね練習通りやり切ることができた。悔いはない……。
・キスアンドクライで審査結果を待つ……
演技終了後に、フィギュアスケートでもお馴染みのスペース「キスアンドクライ」で、ジャガーさんに似たメイクの私は、審査結果を待つ。
静まり返った会場で、私の胸の鼓動が大きく響いているように感じたのは、きっと気のせいではない……。
ドクン
ドクン
ドクン
「先ほどの山科選手の結果は……」
「3.5点です」
カテゴリーの演技順、1番手の私は、あとの選手に得点をアッサリと抜き去られ、カテゴリーで最下位となった……。
参考までに、10~14歳のノービスクラスの子どもたちでも、20点や30点をたたき出す。その10分の1程度の点数しか取れなかった私の実力をご理解頂けるだろう。「惨敗」という言葉さえ生ぬるい。
・キセキ
運動神経が悪いオッサンの実力なんてこんなものだ……。それでも、何が得点に結びつかなかったのか、結果を見て理解できる。ここからもう1度、いちからやり直そう。そう思っていたら……。
奇跡(キセキ)が起きた!
最初にも述べたように、ポール・スポーツのルールは非常に厳しい。演技に関する規定もさることながら、各種提出物の締め切りや、衣装や音楽に関することまで、こと細かく規定が設けられている。
表彰式(私の演技翌日)にカテゴリー1位の選手が諸事情により参加できなかったのだ。彼は11点をとり、私に3倍もの点差をつけた大変優秀な選手だった。演技を見て、「この人の実力にはまだまだ及ばない」と思ったのだが、表彰式不参加で失格となってしまったのだ。
その結果……。
カテゴリー参加者3名のうち、最下位で3位だった私は繰り上がってカテゴリー(アマチュア マスター+40)準優勝に輝いたのである!
とはいえ……。
・3.5点は3.5点
得点は3.5点。自分で作成したスコアシートを元に、ジャッジが行われるのだが、想定していた加点ポイントをことごとく落とし、ムダな減点が多く、実力が乏しいことに変わりはない。奇跡的な出来事が起きたけど、「勝った」と言える結果ではない。多くの人に応援を頂きながら、その期待に応えられなかったと自分では感じている。
これを機に、また基礎から見直して、来年は実力で優勝できるように頑張りたいと思う。私の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
取材協力:一般社団法人日本ポール・スポーツ協会、ポールダンススタジオ「LUXURICA」(※男性は紹介制)
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Source: ロケットニュース24
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