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東京五輪のボランティア募集を契機に、「通訳」の仕事がにわかに注目を浴びている。「高度な技能を生かした仕事を無償でやらせていいのか」「有資格者の報酬が下がる恐れがある」などの議論を聞いたことがある人もいるだろう。
たまに「外国語を話すだけでお金もらえるなんて楽しそー!」「聞いたことを外国語で話すだけでしょ?」という声を聞くが、それは違うと思う。ハッキリ言って「外国語を操れる」と「通訳ができる」は別スキルだ。
・経験してわかったこと「準備が9割、当日1割」
通訳の仕事は現場だけじゃない、準備から始まっている……私(沢井メグ)そう強く感じたのは、中国人学生に対する授業の通訳だ。日本語→中国語で、内容はザックリいうと、とある医療系のもの。通訳が足りなくなり、急遽、私にお鉢が回ってきたのだった。
私は中国語でのコミュニケーションは大きな問題はなく、それまで、外国人学生に生活面や「日本食を作ってみよう!」などのレクリエーション寄りの授業の通訳をしたことはあった。しかし医療系の授業は初めて。
依頼があったときにまず思ったのは、
「そんな簡単に言わないでー!」
である。たとえば用語ひとつとっても、日本語は聞けばなんとなくわかるが、中国語となるとわからない。また、授業担当の教員のこともあまりよく知らなかったので、できることなら、話者のクセや授業のスタイルなども把握しておきたかった。
しかし、その時間は取れなかったため、とりあえず授業で使う資料をもらい、実習室の機器なども見学させてもらって終了。で、速攻で戻って予習した。まず日本語で内容を理解してから、知らない用語を調べる。半日~1日近くかかったように記憶している。準備9割、当日1割だ。
・コミュニケーションが取れるとは別の話
迎えた当日は、内心テンパリ気味だったが……問題なく終了! 学生も授業に集中した反応を見せており、「面白かった!」「日本の授業の雰囲気がわかってよかった」などと話していた。学生にとっては、人生でたった1回の日本での授業かもしれない。そう思うと失敗しなくてマジでよかった!
それもこれも、
・予習できたこと。
・先生の話し方がとても簡潔であったこと。
・授業の内容がほぼレジュメ通りの流れ。脱線した話や学生からの質問も予習内容や既存の知識の範疇だったこと。
など、幸運が重なったためだ。また、学生とは以前からコミュニケーションをとっており、すでに良い関係が築けていたことも大きかったと思う。
私の場合は、半分、身内のようなものだったが、言うまでもなくプロの現場はもっと厳しい。自分の言葉で自由に話すのと、表面上の意味だけでなく中身まで汲み取って、他言語で話すのはマジ別モノだ。
・言語以外にも様々なスキル
準備にさく時間は言語レベルや、予備知識、経験などによって変わってくるだろう。だがどんなに経験豊富な人でも事前の予習をしないなんて聞いたことがない。やはり、言語だけでなく、文化的知識、専門知識、気配り等等さまざまなスキルが要求されるのではないだろうか。
ちなみに、私の場合は通常業務に組み込まれていたので、とくに報酬は発生しなかったが、試しに時給換算して実働+準備時間で割ると、ちょっと切ないことになった。これじゃ生きていけない……。
そう思うと「外国語を話せるなら簡単でしょ?」と、タダや無償に近い報酬でやらせちゃダメでしょ……と思わずにはいられない。もちろん通訳ボランティアで得るものは大きいし、それ自体を否定するつもりはない。ただ、それありきというのはどうだろう? あなたはどう思われるだろうか?
執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
Source: ロケットニュース24
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