【真相】タバコ屋にしか見えないのにカレーが絶品な『フラヌール』でお店の歴史を聞いたら、感動秘話に出会った!



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お店を営む上で、店構えはとても重要だ。特に飲食店の場合、入りにくいお店だったら、美味しい料理を作ってもその味を知ってもらうことが出来ない。外観は「店の顔」であり、もっとも有力な宣伝手段のひとつ……のはず。しかしその鉄則を無視するように、タバコ屋にしか見えない食堂『フラヌール』は営業を続けている。

お店については以前の記事でもお伝えしたが、そもそもどうして改装しないのか? 外観がタバコ屋にしか見えないのはマイナス要素じゃないのか? と思っていたところ、縁あってフラヌールのオーナーとお話をさせていただく機会を得た。インタビューを通して見えてきたのは、人と人とのつながりがもたらすものだった。

・カレーもタバコも売っていなかった時代

そもそも現在の店構えについてお伝えする前に、お店がどういう形態で営業しているのかについて説明しなければならない。フラヌールは「カレー フラヌール」と言う名前で営業しているのだが、店内の半分はタバコ屋であり、「たばこ やなぎや」という名前も持っている。

カレーが先か? タバコが先か?

・歴史あるタバコ屋かな?

その答えはタバコである。では元々タバコ屋だったのかというと、「そうではない」とオーナーの柳原陽子さんは話す。

柳原さん「私が嫁いできた時は、この界隈(渋谷・百軒店)のバーなんかに海産物を卸す仕事をやっていたんですよ。お菓子なんかを売ってたこともあったけど。その頃はまだタバコの許可(タバコ小売販売業の許可)も持ってなかったし、30メートルくらい先によそのタバコ屋さんもあってね。そこと近いもんだから、売ることができなかったんですよ」

時はバブルまっただ中、タバコに関する規制も今ほど厳しくない時代に、思わぬチャンスが訪れた。最寄りのタバコ屋が閉店し、許可を取ることができたのだ。それ以来、現在に至るまでタバコの販売を続けている。フラヌールは「歴史あるタバコ屋」。それが真相のようである。

では、カレーは?

・フレンチシェフとの出会い

カレーは1人のシェフとの出会いから、物語が始まったという。実のところカレーの提供を開始したのは、今から約28年前の平成2年(1990年)のことだそう。外観の影響からかあまり知られていなかったのだが、あの地で30年もカレーの提供を続けていたのである。

それをさらにさかのぼること数十年前、お店ではまだ海産物を取り扱っていた時代に、目黒区洗足から1人の男性が近所に引っ越してきた。その人、富山清章さんは家財道具をほとんど持っていないような状態で、近くの住居に越してきたそうだ。コップさえ持っていなかったというから、飲食修行の真っ最中で、お金は勉強のための食べ歩きに使っていたのかもしれない。

柳原さんはそんな富山さんを気にかけて、コップをあげたり余ったお菓子をお裾分けしていたという。当時第一ホテルに勤めていた富山さんは、その親切を恩義に感じて、「週に1度料理を教えてあげますよ」と申し出たのだ。

そこから、カレーの歴史が始まっていく。




週に1度の富山料理教室が続いて行くなかで、富山さんの方からある提案がなされた。それは、「僕がホテルを引退したら、ここで料理を手伝いますよ」。それがフラヌールの始まりだったのである。平成2年に富山さんがシェフとしてやってきて、タバコ屋の外観を維持したまま、本格的なステーキカレーの提供が始まり、今に至っている。

・富山さんの味は引き継がれ

話はここで終わらない。

その富山さんは現在お店にはいないのだ。長年の立ち仕事の影響で腰をいためてしまって現役を退き、やなぎやの顧問に就いている。では、今、誰がカレーを作っているのかというと……

柳原さんの孫にあたる、大島夏毅さんがシェフとして厨房に立っている。ちなみにタバコ屋の方は夏毅さんの父・大島次郎さんが担当し、家族でお店を盛り立てているのである。

・東京五輪のパキスタンカレー

夏毅さんは2015年から約2年間富山さんの元で修業して味を引き継ぎ、現在の営業を行っているという。なお、引き継がれたカレーの味にはひとつ秘密がある。富山さんはフラヌールでカレーを提供するに当たって「パキスタンカレーを出しましょう」と提案したという。

東京オリンピックが開催された1964年当時、富山さんの勤める第一ホテルは、パキスタンカレーを作る依頼を受けたそうだ。その時に学んだレシピをフラヌールで再現し、日本人向けに味をアレンジして提供しているのだとか。

オリンピックといえば、東京も2020年に向けて盛り上がっていくことだろう。それに向けてお店を改装したりして、盛り上げていく気はないのだろうか? 私(佐藤)個人的にはいっそタバコ販売を終了してはどうかな、と勝手に思ってしまうのだが……

柳原さん「昔は2階もお店をしてたんですよ。でも、私がガンになった時に、このままお店を続けていくことも難しいと思って、上は貸しに出しちゃったんですよ。その間もタバコは売れてて、おかげで今でも商売を続けていくことができているので、結果的にタバコ販売をやってて良かったなあと思ってます」

カレーかタバコ、どちらかに商売を1本化していたら、今フラヌールはなかったかもしれない。2本の柱で商売を続けてきたからこそ、やって来れたのではないだろうか。

柳原さんと富山さんの出会いが紡ぎ出したカレーの味は夏毅さんに引き継がれ、この先もフラヌールは続いて行くことだろう。タバコ屋の外観に守られた本格フレンチの味は、2020年もその先も続いて行く。

・今回訪問した店舗の情報

店名 フラヌール
住所 東京都渋谷区道玄坂2-17-5
営業時間 11:30~20:00(ランチ11:00~14:00)
定休日 日曜日

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24


Source: ロケットニュース24






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