【インタビュー】ロックバンド「人間椅子」20作目のスタジオアルバム『異次元からの咆哮』を発表! かつてない産みの苦しみを越えて



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バンド活動28年を迎えた、日本を代表するロックバンド「人間椅子」。ここ数年の快進撃は、繰り返しお伝えしている通りだ。2016年2月に19枚目のオリジナルアルバムをリリースし、同年3度にわたるツアーを敢行。

ツアーからの演奏をまとめたライブアルバムを、2017年2月にリリースしたばかり。それから約半年を経た10月4日、通算20枚目となるオリジナルアルバム『異次元からの咆哮(ほうこう)』を発売したのである。20枚という節目の作品に、彼らが込めた思いとは? そしてリリースツアーファイナルのZeppDiverCityに向けて、今、何を思うのか?

・異次元から見たこの世

前作『怪談 そして死とエロス』は、その名にある通りに「怪談」をテーマにした作品だ。「三途の川」や「雪女」、「芳一受難」など、日本に古くから伝わる怪談を、彼らの世界観で表現したアルバムで、死を通して命の大切さを訴えている。

そして今作はその怪談の向こう側、「異次元」をテーマにしている。ギターボーカルの和嶋慎治氏いわく

「 “あの世” も含めた様々な異次元から見たこの世を描いたのが、本作です」

とのこと。その言葉を如実にあらわしているのが、12曲目の『異端者の悲しみ』だ。

これまでの作品では、この世(現世)から見た、地獄やあの世などの異世界を表現していたのに対して、この曲が表す「異端者」はどこか別な宇宙(異次元)からこの世に紛れこんでしまった人物の心を歌っている。今作は、死の世界のもう一歩向こうに足を踏み入れた印象を強く受けるのだ。

・「芸術的な作品」を求めて

録音が始まったのは、夏の盛りの7月。そこに至るまでは、かなり苦しい道のりを経たようである。

和嶋 「20枚目の節目ってことで、前作を越えるものを作りたいって気持ちがあったんですよ。最初はそれが負担になっていたところがありますね。でも過去を振り返ったら、もっと自由に曲を作っていたことに改めて気が付いて、そこから自由に考えるように意識しました。

今までと違うことと言えば、今回はボツにしたリフが結構あります。今までは出来上がったものは全部入れようとしてたところがあるけど、今回はかなり削ったかな。聞く人が増えたって実感しているので、ブラッシュアップを重ねました。繰り返し聞けるものを作るように意識しましたね」

鈴木研一(ベースボーカル) 「僕は(20枚目の)節目ってのを特に意識しなかったな。和嶋くんが『芸術的なアルバムにしたい』って言っていたので、その意気込みにそって、いつも以上にリフを作りましたよ。厳選してね。自分のなかの厳選する基準をきびしくしました。

今回自分で気になったのは、リフがポコポコ浮かばなくなったことかなあ。すんごい考えるようになりましたよね」

和嶋 「そうなんだよね。ポコポコ浮かぶ時もある、煮詰まる時もある。僕の場合は煮詰まると、苦しかった過去を思い出したり、思い出の場所に行ってましたよ。そうするとね、自分のルーツを思い出して、曲が浮かんでくるんですよ」

鈴木 「僕は作った曲を和嶋くんとノブくんに聴かせて反応が悪いのを見ると、これはいかん! と奮い立って曲が浮かぶかな」




ナカジマノブ(ドラムボーカル) 「う~ん、特に煮詰まった時の解消法ってのは、俺はないかなあ。レコーディング中に、毎回新しいプレイを織り込むようにしているんだけど、出来ないことをやろうとしてたら、ケンちゃん(鈴木)が『俺がチョッパーをやるようなもんだよ』とか、和嶋くんが『できることで最高なことをやった方がいいよ』と言ってくれるんだよね。

強いて言えば、その助言が、煮詰まった時の解消になってるかな。そう言ってもらって、自分のできる最高のビート、音色を出すように心がけましたね」

・窮地から引き上げたもの

過去のインタビューでは、アルバム制作の過程で苦しんだことを、あまり聞いて来なかったように思う。当然、どの作品を生み出すのも、簡単なことではなかったはず。だが彼らの口ぶりから、何かひとつの境界線を越えて、新しい境地に達したのではないか? そう思わざるを得ない。

和嶋 「多くの人に楽しんで欲しいと思うと、より大きな『産みの苦しみ』を味わうことになると思います。今までにも増して、追い込まれると言っていいでしょうね。

良いものって、そうして出来上がるものじゃないかな。たとえば自分を窮地から引き上げたものは、やっぱり音楽なんですよ。苦しんだ過去に触れることによって、インスピレーションが湧いたということは……ちょっとは芸術に近付けたかもしれない。

今作が、自分たちに課した『芸術的作品』という要求をクリア出来ていればいいね」

・アルバムを象徴する曲

芸術的な作品を作りたい、その要求を果たすために、もっとも完成に苦労したのが1曲目の『虚無の声』だという。この曲は、全12曲のなかでもっとも最後に完成したとのこと。リズム録りが始まった段階でも完成しておらず、一番手を焼いた曲らしい。

だが、和嶋氏は「この曲がアルバム全体を象徴している」と話す。苦しみを突き破って、その向こう側に達したようだ。

ちなみにこの曲のミュージックビデオは、全面LED照明を張り巡らせた「ニコファーレ」で撮影が行われた。プロジェクションマッピングを用いた極彩色の演出は、「異次元」を見事に表現していると言っていいだろう。まるでこの世を超越した無限曼荼羅のような映像だ。色と音の小宇宙といっても言い過ぎではない。

バンド活動28年、長い歳月を経てもなお、彼らがひたむきにロックを貫けるのは、自らに課した要求を越え続けているからではないだろうか。人間椅子は「異次元」をも越えて行く。

■アルバム発売記念 ニコニコ生放送「帰ってきた人間椅子倶楽部 vol.06 supported by ロケットニュース24
放送日 2017年10月12日
時間 19:30~ ミュージックビデオ一挙放送、20:30~ メンバー生出演

取材協力:徳間ジャパン人間椅子
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24


Source: ロケットニュース24






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